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フジクラの好調業績と独自技術—2/10決算が示す成長と今後の展望

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フジクラ
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2024年第3四半期の
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決算を解説していくよ
積み上げ棒グラフ(売上高と営業利益)

フジクラの四半期売上高と営業利益の推移

単位:億円

2022.6
2022.9
2022.12
2023.3
2023.6
2023.9
2023.12
2024.3
2024.6
2024.9
2024.12

1. 直近4四半期の売上高と営業利益の推移

フジクラの業績は直近4四半期で一貫して拡大傾向にあります。 前期2024年1-3月期(FY2023 4Q)の売上高は約2,007億円、営業利益は約180億円でした。 2024年4-6月期(FY2024 1Q)には売上高2,183億円、営業利益245億円と増加し、 前年同期比でも売上+14.8%、営業利益+94.5%の大幅増益となりました。

2024年7-9月期(FY2024 2Q)も売上高は約2,292億円、営業利益は約307億円へ伸長し、 上期累計では売上高4,475億円(前年同期比+14.2%)、営業利益551億円(同+79.2%)に達しています。 2024年10-12月期(FY2024 3Q)は売上高2,634億円、営業利益411億円に達し、 前四半期比でも大きく伸長しました。前年同期と比較すると売上高+27.2%、営業利益+99.0%と ほぼ倍増しており、売上営業利益率も10.0%→15.6%へ大幅に改善しています。

四半期ごとの増収増益を牽引した要因としては、情報通信分野向けの需要拡大が大きく、 データセンター向け光通信ケーブルなどの販売好調が続いたことが挙げられます。 また、自動車電装やエレクトロニクス部門も堅調で、特に7-9月期には エレクトロニクス事業の季節要因(おそらくスマートフォン向け部品需要のピーク)もあり 収益を押し上げました。10-12月期には生成AIブームに伴うデータセンター需要や5G関連投資の追い風で 情報通信事業がさらに伸長し、営業利益の急増につながったと考えられます。

2. 株価動向

2025年2月10日の第3四半期決算発表後、フジクラの株価は急騰しました。決算で大幅な増益と 通期業績・配当の上方修正が発表されたことを好感し、翌営業日2月12日の終値は前日比+10.35%の 7,366円となり、上場来高値を更新しています。 市場予想を上回る業績上方修正(営業利益予想1,040億円→1,240億円)や年間配当80円への増配、 そして生成AI普及によるデータセンター向け需要の拡大といった好材料が重なり、 投資家の買いを集めました。 実際、情報通信事業部門の今期売上予想は従来3,651億円から4,172億円へ引き上げられ、 牽引役となっています。

しかし高値更新後、株価は2月中旬以降調整局面となり2月21日頃までに一時6,600円前後まで下落しました。 急ピッチの上昇で短期的な過熱感が意識され、高値警戒による利益確定売りが出たことが一因です。 また、発表直後に広がったポジティブサプライズの一巡や、為替の円高進行・米国株の調整といった 外部環境も重なり、株価の押し下げ要因となりました。 特に2月中旬には円高警戒感から全体相場が下落し、フジクラも他の輸出関連株とともに反落しています。 加えて、1月末に報じられた中国企業の低コストAI台頭(いわゆる「DeepSeekショック」)による AI関連株全体の調整局面が記憶に新しく、生成AIブームの持続性に対する警戒感も 一部投資家の利食い売りを誘ったと考えられます。 このように、決算発表直後こそ急騰したものの、その後は過熱感の解消と外部要因による調整で 株価は一服しました。

3. 競合企業の状況

フジクラが属する電線・ケーブル業界は、国内大手各社が総じて好調です。 住友電気工業(住友電工)は2025年3月期第3四半期累計(4-12月)決算で売上高が約3兆4,412億円、 経常利益1,979億円と前年同期比+42%の増益を達成しました。 自動車ワイヤーハーネス事業の回復や情報通信向け光ファイバー需要の伸長が寄与し、大幅な増益となっています。 また古河電気工業(古河電工)も業績改善が著しく、4-12月期の経常損益は361億円の黒字(前年同期は29.5億円の赤字)と 黒字転換しました。 通期経常利益見通しも従来360億円→460億円へ28%上方修正され、増益率は前期比4.5倍に達する見込みです。 この業績好転を受け、古河電工は期末配当予想も1株当たり30円増額(90円→120円)としています。

中堅の昭和電線ホールディングス(SWCC)も同様に好調です。2025年3月期第3四半期累計の連結売上高は 前年同期比+12%増となり、17期ぶりに過去最高を更新しました。 四半期純利益も前年同期比+22%増で2期ぶりの過去最高益となっており、 業績・株価ともに上向いています。こうした国内競合各社はいずれも情報通信インフラ投資や 自動車(特にEV)関連需要の追い風を受けて増収増益基調にあり、フジクラの好調さは業界全体の トレンドとも一致しています。

海外の競合動向も堅調で、世界最大手の伊プライスマン(Prysmian)グループは2023年通年で 調整後EBITDAが前年比+9.4%増の16億28百万ユーロに達し、利益率も10.6%(前年9.3%)へ改善しました。 同社の23年1-9月期EBITDAも+14%増と増益基調で、光ファイバー・ケーブル需要の世界的な拡大を反映しています。 また中国勢も台頭しており、大手の長飛光纖(YOFC)などは国内需要を追い風に生産拡大を続けています。 もっともフジクラを含む日本勢は高機能製品や品質面で強みを発揮し、高収益を確保している状況です。

実際、フジクラの営業利益率(10-12月期15.6%)は住友電工や古河電工よりも高く、 付加価値の高い事業領域で競争優位に立っていることが示唆されます。各社とも業界の追い風を受けつつ、 自社の強みを活かして収益拡大を図っています。

4. フジクラの独自技術

フジクラは同業の住友電工や古河電工などと競い合うなかで、長年にわたり培ってきた材料開発や 高精度加工技術を活用し、独自の競争力を確立しています。特に以下のような技術領域が 他社との差別化要因となっています。

4-1. 光ファイバー・光ケーブル関連技術

  • 超高密度・超低損失ケーブル: 「Spider Web Ribbon®」に代表される特許技術を活用し、 狭い空間にも多数のファイバーを収容しやすい構造を実現。施工性と低損失を両立した光ケーブルであり、 データセンターや通信インフラに大きく貢献している。
  • 光融着接続機(スプライサー): 「FITEL」ブランドのスプライサーは 世界トップクラスの市場シェアを誇る高精度接続機。接続ロスの低減や 作業効率の高さが評価され、国内外で導入が進んでいる。

4-2. 自動車用ワイヤーハーネス

  • 高電圧ハーネス: EVやハイブリッド車向けのハーネスでは、 高電圧・大電流への対応と軽量化が必須。フジクラは絶縁材料やノイズシールド技術に 強みを有し、採算性の高い製品を開発・提供している。
  • 車載LAN対応: 自動運転やコネクテッド化が進む中、 車内データ通信量は急増。フジクラは高速通信対応の車載LANケーブルやコネクタ部品で 光通信事業のノウハウを応用し、ノイズ耐性・高速伝送を両立させる技術を展開している。

4-3. エレクトロニクス・極細配線技術

  • FPC(フレキシブルプリント基板): スマートフォンやウェアラブル機器など 小型電子機器向けの極細配線・多層化技術を持ち、高い歩留まりでの量産体制を確立。 材料開発から実装までを自社内で完結できる垂直統合型の研究開発が強み。

これらの分野は、単なる電線・ケーブル製品の供給に留まらず、 高機能・高信頼性を求める市場ニーズに対応することで高い利益率を確保しています。 住友電工や古河電工も同様に独自技術を持ちますが、フジクラは光通信や自動車電装での 細やかな設計ノウハウを強みとし、特許や知的財産網を構築することで他社が 簡単に模倣しづらい領域を築いているのが特長です。

5. 今後の見通し

フジクラの今後の成長は、情報通信(光ファイバー・光ケーブル等)と自動車部品(ワイヤーハーネスや高圧ケーブル等) の両領域において期待されています。情報通信分野では5G通信網の拡充やデータセンター需要のさらなる増加が見込まれ、 特に生成AIの普及によるデータトラフィックの爆発的増大に対応した光通信インフラ需要は 引き続き旺盛と予想されます。 実際、同社も「データセンター向け製品需要の大幅伸長」が業績押し上げ要因になったと説明しており、 中期的にも国内外で光ケーブル需要が高水準を維持する可能性が高いでしょう。 また5G/6G通信への投資や、新興国でのブロードバンド整備もフジクラの情報通信事業にとって追い風です。

自動車分野では電気自動車(EV)シフトに伴い、車載用ケーブルやワイヤーハーネスの需要構造が変化しています。 EVでは高電圧・大電流に対応する特殊電線や接続部品が必要となるため、従来以上に付加価値の高い製品への ニーズが増えています。フジクラは高速通信対応の車載LANケーブル開発など新製品にも注力しており、 EV市場拡大とともに自動車電装事業の成長が期待されます。さらに、コネクテッドカーや 自動運転の進展により車内外のデータ伝送量が増加しているため、フジクラの通信技術と 自動車部品ノウハウの融合領域も今後一段と拡大する可能性があります。

一方で、留意すべきリスク要因も存在します。まず為替変動です。フジクラは海外売上比率が高く、 円安は追い風になる一方、円高に振れれば業績下振れ要因となります。実際、足元で円高が進行した局面では 株価が敏感に反応しており、為替の影響は無視できません。次に原材料価格の変動リスクがあります。 銅やアルミなど電線材料の価格高騰は製造コストを押し上げ、価格転嫁の遅れが 利益圧迫につながり得ます。最近は資源価格が安定傾向にあるものの、 ウクライナ情勢や産油国動向次第で再び変動しかねず注意が必要です。

加えて、市況変動や競合環境もリスクです。データセンター向け需要については、 一部でクラウド大手の設備投資減速懸念なども指摘されています。生成AIブームも競争激化で 投資対効果が厳しく見直されれば関連需要が減速する恐れがあります。 また中国メーカーとの価格競争激化により光ファイバーの市況が悪化するリスクもあります。 フジクラ自身、直近ではそうした懸念は後退したとされていますが、 今後も海外勢の動向には警戒が必要でしょう。さらに米中関係や貿易政策の変化(関税措置など)も サプライチェーンに影響を及ぼすリスクがあります。

総じて、フジクラの業績はデータセンター需要やEVシフトといった構造的追い風を受け 中期的な成長が期待できる一方、為替や資源価格、競合動向など外部リスクの注視が欠かせません。 足元の業績絶好調を維持・発展させるためには、需要トレンドを的確に捉えた設備投資・開発と、 コスト管理や価格戦略によるリスクヘッジが重要となるでしょう。 現在の市場環境(生成AIによる通信需要拡大、脱炭素社会に向けた電化シフトなど)は 同社にとって追い風であり、こうした成長分野での競争優位を活かすことで 今後も高い収益成長が続く可能性があります。各種リスクを慎重にマネジメントしつつ、 この追い風をどこまで取り込めるかが、フジクラのさらなる株価上昇と 企業価値向上のカギを握ると言えます。

6. まとめ

以上のようにフジクラは直近4四半期で業績を大きく伸ばし、2025年2月10日の好決算発表を機に株価が急伸しました。 その後は過熱感や為替動向など外部要因の影響もあって一時的な調整が入っていますが、 データセンター向け光通信や自動車電装分野が引き続き強く、投資家からの注目度は高まっています。

同業他社も好調な中で、フジクラは超高密度光ファイバーケーブルやスプライサー技術、 EV向け高電圧ハーネスなどの独自技術を軸に収益性を高めてきました。 今後も生成AIやEVシフトといった構造的な需要増が続く見込みであり、 これを的確に捉えることで業績上振れ余地が十分にあります。 ただし、為替や原材料価格の変動、中国勢との競争激化などリスク要因も少なくなく、 それらに対する慎重なマネジメントが中長期的な企業価値向上に不可欠となるでしょう。

参考文献:フジクラ決算説明会資料
本調査はdeep researchを用いています。投資は自己責任でお願いします。