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良品計画(無印良品)業績分析:売上高・利益率ともに過去最高水準を更新

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良品計画の
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2025年第1四半期の
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決算を解説していくよ

1. はじめに

良品計画(無印良品)は2023年後半以降、売上高・営業利益・純利益といった主要指標が 四半期ベースで大幅な伸長を続け、2024年8月期通期では売上高・営業利益がともに過去最高を更新しました。 同時に営業利益率も改善し、直近では2025年8月期第1四半期(2024年9~11月)でも 過去最高の四半期売上・大幅増益を達成しています。 本稿では、この1年間の四半期決算推移や国内外の売上構成、EC販売の成長、コスト削減策など、 良品計画の業績向上要因を総合的に整理します。

2. 四半期ごとの業績推移

直近1年では2023年9-11月(2024年8月期第1四半期)から2024年6-8月(第4四半期)まで、 毎四半期で前年同期比二桁の増収・大幅増益を達成しました。例えば、2024年8月期上期(2023年9月~2024年2月)では 営業収益が前年同期比12.9%増の3,198億円、営業利益は136.8%増の240億円となり、 売上に比して利益が約2.4倍に急増しています。第3四半期累計(2023年9月~2024年5月)でも 営業収益4,956億円、営業利益424億円と高成長を維持しました。第4四半期(2024年6~8月)も伸びが続き、 2024年8月期通期では売上高6,616億円(前期比13.8%増)、営業利益561億円(69.4%増)と いずれも過去最高を更新。営業利益率は前年の5.7%から8.5%へ、2.8ポイント改善しています。

さらに直近の2025年8月期第1四半期(2024年9-11月)は 営業収益1,976億円(前年同期比21.3%増)と四半期ベースで最高水準を連続更新し、 営業利益219億円(58.2%増)、営業利益率11.1%を達成しました。 これを受け、良品計画は通期の業績予想を上方修正し、2期連続の過去最高益を見込む状況です。 純利益も大幅に伸びており、2024年8月期通期の親会社株主に帰属する当期純利益は 前期比88.5%増の415億円と顕著な回復をみせました。

全体的に2023年後半より収益性が急改善し、四半期ごとに前年の営業利益を大幅に上回るペースで伸ばしているのが特徴です。 背景には、国内外での売上拡大と利益率改善が同時進行したことが挙げられます。

3. 国内と海外の売上比率の変化

良品計画の売上構成は、直近でも「国内 約6割:海外 約4割」の比率で推移しており、 2024年8月期実績でも国内事業が約3,889億円(13.4%増)で全体の59%、海外事業が約2,727億円(14.3%増)で41%と、 前期とほぼ同水準の内訳でした。店舗増に伴い国内外ともバランスよく成長しているため、 大きな比率変動は見られません。

しかし利益面では海外比率が高く、2024年8月期のセグメント利益は「国内47%:海外53%」となりました。 これは海外(特に中国を中心とした東アジア事業)で営業利益率が16~18%と高水準を維持し、 国内(約10%)を上回っているためです。実際、地域別に見ると東アジア18.3%、東南アジア・オセアニア11.8%、 欧米14.1%といずれも国内(10.2%)を上回る水準でした。もっとも、2024年8月期は国内事業も 営業利益397億円(61.8%増)と大幅増益を達成し、利益率10.2%まで回復しています。

一方で海外事業は、為替の円安効果で円換算売上・利益が押し上げられた側面があるほか、 地域ごとに明暗が分かれました。東アジア(中国本土など)は増収増益ながら既存店売上が前年割れ、 東南アジア・オセアニアは新規出店費用が先行し現地ベースでは減益、欧米は北米好調・欧州閉店による減収も 円安で最終的に増益となるなど、地域によって事情が異なります。いずれにせよ円安が追い風となり、 最終的には海外売上全体が増収増益となって、売上比率は依然として国内6:海外4程度を保っています。

4. EC(電子商取引)販売の動向と成長

良品計画では、自社ECと店舗のオムニチャネル化を推進しており、 国内外でEC販売が拡大傾向にあります。国内では公式アプリ「MUJI passport」やSNSを活用した集客を強化し、 既存店とECを合わせた全店売上高が前年同期比116.0%と好調に推移しました。

2024年8月期上期は値上げの影響で一時伸び悩むも、下期にかけて新商品投入や マーケティング効果でプラスに転換し、通期で既存店売上は前年超えを達成。生活雑貨分野の伸びや 日用品の販売増がECでも寄与し、客数・客単価とも上昇しながら値上げ後も客離れを起こさずに済みました。

海外では、中国本土をはじめとする東アジアでEC販売が業績下支えの役割を果たしています。 中国本土の既存店売上は景気減速や競合などで一時前年割れが続いたものの、 オンライン販売が比較的堅調に推移し、新規出店効果も相まって人民元ベースで苦戦しつつも 円換算では増収を確保。2024年9月には中国本土の既存店売上が前年同月比プラスに転じ、 ECの伸長が回復の後押しをしたとみられます。

東南アジア・オセアニアでは国ごとに差がありますが、シンガポール・マレーシアでは EC含め堅調な伸びを示す一方、タイ・ベトナムなど経済停滞の影響を受ける国は苦戦が続きました。 欧米ではオンライン比率自体は高くないものの、北米店舗売上が伸び、 欧州は不採算店の閉鎖を進めながら事業再編を図っています。 いずれにせよECは国内外で一定の成長ドライバーとなり、 コロナ禍後のオンライン需要を捉える形で売上拡大を下支えしています。

5. コスト削減・効率化施策の影響

良品計画の業績向上を支えるもう一つの大きな要因が、商品原価率や販管費率の改善です。 2024年8月期は国内での価格改定(値上げ)効果や過度な値下げ抑制により、粗利益率が50.8%と 前期比で大幅に改善し、売上総利益の増加がダイレクトに利益拡大へつながりました。

また、物流コストや店舗運営費の効率化も進められています。国内では納品回数やトラック積載率の見直し、 店舗家賃の固定化戦略(売上に連動しない定額家賃物件の拡大)などにより 販管費率の抑制に成功。人件費は増加傾向にあるものの、売上増に伴って費用率が許容範囲に収まり、 固定費の逓減効果も表れています。

海外においては円安による調達コストの目減りが追い風となり、輸出時の円建て原価が下がったことで 営業総利益率が上昇しやすい構造になりました。東南アジアなど現地ベースでは 出店費用増や競争激化により減益となっていても、円換算すると増益幅が拡大するケースもあります。 さらに欧米事業では不採算店閉鎖によるリストラが進み、収益性が改善傾向です。 結果として、良品計画の営業利益率は前年通期比で大きく向上しました。

6. 競争環境の変化と良品計画の対応

良品計画が直面する競争環境として、中国本土での地元低価格雑貨チェーンの台頭や、 国内でのユニクロ・ニトリ・100円ショップなどとの顧客争奪が挙げられます。 中国市場では消費低迷や競合激化で既存店売上が一時マイナスに転じましたが、 無印良品のブランドイメージと品質重視の商品構成を武器に、安易な値下げに走らず差別化を図りました。 結果的にEC強化などで下支えしつつ、2024年秋以降は中国本土もプラス成長へ回復しつつあります。

国内では多業態との価格競争が続くなか、良品計画は生活雑貨・食品・衣料品をワンストップで揃える業態、 「感じ良い暮らし」を提案するブランド戦略などで固定ファンを確保しています。 物価高に伴い値上げを実施しつつも、適正価格と品質感のバランスを重視することで 客数の大幅減を招くことなく客単価アップに成功しました。さらに地方・郊外への大型店展開や コミュニティ連携型の店舗づくりなど、他社と異なる出店・サービス戦略を打ち出すことで 市場シェアの拡大を図っています。

7. 新商品・新戦略が業績に与えた影響

良品計画の売上拡大には、商品ラインナップの強化とマーケティング施策が大きく寄与しました。 2024年8月期はスキンケアや日用消耗品などの生活雑貨が好調で、若年層にも支持が広がっています。 衣服雑貨分野でも素材やデザインを大幅にリニューアルし、下期からプラス成長へ切り替えに成功。 食品分野もカレーや冷凍食品といったヒット商品の拡充により、既存店売上全体を押し上げています。

マーケティング面では「MUJI passport」会員数が国内で約1,700万人を超え、 SNSやアプリを活用した販促が実店舗・EC双方の売上増に寄与。無印良品週間(セール)や デジタルクーポンなどの施策で来店頻度や客単価を高め、新商品の認知拡大を効率的に進めました。 また、郊外や地方への大型店出店を強化することで新たな顧客を取り込み、 出店効果も相まってトップラインの成長につながっています。

8. その他業績向上の要因

ここまで述べたように、売上拡大と利益率向上が同時に進んだことが最大の要因ですが、 それ以外にも外的・内的なプラス要因が存在します。

まずインバウンド需要の回復です。コロナ禍が明けつつある2023年以降、 訪日外国人観光客が増え、都心大型店を中心に売上が上乗せされました。全社ベースでの規模は限定的ながら、 高額品の購入や地方店舗への誘引などの効果が一部寄与したとみられます。

次に為替相場の円安による海外子会社の収益押し上げ効果や、 海外展開の拡大による規模の経済メリットも挙げられます。 さらに経営体制面では、ユニクロ出身の堂前社長による「第二創業」と位置づけた取り組みが進み、 2024年末に新社長へのバトンタッチが予定されるなど、組織改革と商品開発力強化の動きが進行中です。 こうした経営の変革期に大きく舵を切ったことも、短期間での業績回復を後押ししたといえます。

9. まとめ

この1年間の良品計画は、国内外での新規出店とECを含む既存店売上の好調を背景に 大きく増収し、同時に値上げ効果やコスト効率化策で高い利益率を達成することに成功しました。 特に2024年8月期通期と2025年8月期第1四半期は、売上・利益とも過去最高を連続更新し、 営業利益率も大きく上昇しています。

背景には、製品品質やブランドイメージへの根強い支持、 EC活用や新商品開発・大型店戦略など多面的な売上成長策、 そして価格改定や物流効率化などによる利益率改善が挙げられます。 為替要因やインバウンド回復といった外部環境も追い風となりました。 今後も世界各地域での出店拡大とデジタルシフトによる成長が見込まれる一方、 中国事業の回復ペースや世界的な景気動向など注視すべきリスクも残っています。 いずれにせよ「売上拡大+利益率改善」の両輪が今の良品計画を支えており、 これらを継続的に強化できるかが中長期的な課題となるでしょう。

参考文献・出典: 良品計画 決算短信、daiwair.co.jp、finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp、 wwdjapan.com、diamond-rm.net、minkabu.jp、Yahoo!ファイナンス、note.com 他

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