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東海カーボン、構造改革で赤字転落も今期黒字見通し――割安感で株価急反発

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分析をしていくよ
東海カーボン(5301)の株価動向とその背景分析
欧州事業リストラ等で2024年通期は最終赤字転落。本業はカーボンブラックやファインカーボンが支え、2025年は黒字復帰見通し。構造改革完了やPBR1倍割れの割安感で株価は急反発。

直近の四半期決算の概要

東海カーボンが2025年2月に発表した直近の四半期決算(2024年10~12月期、第四四半期)の業績は、売上高約914億円、営業利益約42億円、四半期純損益は約623億円の赤字でした。前年同期(2023年10~12月期)は営業利益率が9.3%で純利益を出していましたが、直近四半期では営業利益率が4.6%に低下し大幅赤字に転落しています。この赤字は、欧州事業を含む一部事業での構造改革に伴う特別損失を計上したことが主因です。

直近の四半期を含む2024年12月期通期でも、売上高は3,501億円(前年比3.8%減)、営業利益は193億円(同49.9%減)と減収減益となり、最終損益は567億円の赤字(前期は254億円の黒字)に転落しました。主力のスメルティング&ライニング事業や黒鉛電極事業で構造改革に伴う損失を計上したことが、この巨額赤字の要因です。一方、カーボンブラック事業などは増収増益を維持しており、全社としての営業損益は黒字を確保しています。

業績と市場予想の比較

今回の2024年12月期の決算は、市場や会社の予想を大きく下回る結果となりました。もともと会社側は2024年通期について最終黒字150億円を見込んでいましたが、蓋を開けてみれば一転して567億円の最終赤字で着地しています。営業利益も当初予想(230億円)に届かず、結果は193億円にとどまりました。売上高も予想の3,700億円に対して実績は3,501億円とやや未達です。

このように業績が予想を下回った背景には、鉄鋼向け事業の不振や構造改革費用の発生など、後述する要因がありました。しかしながら、会社は同時に2025年12月期の見通しを発表し、売上高3,410億円(前期比2.6%減)ながら営業利益233億円(同20.2%増)、そして最終損益は110億円の黒字へ回復する予想を示しました。大幅赤字から一転して黒字復帰を見込む強気な見通しに対し、市場では「業績のボトムは脱した」との見方も出ています。実際、2024年後半には四半期ごとの営業利益が徐々に持ち直し(1Q:35億円 → 2Q:49億円 → 3Q:68億円 → 4Q:42億円)、事業の底打ち感が現れていました。

カーボン製品業界の動向

業界全体の需給動向も、東海カーボンの業績に大きく影響しています。主力の黒鉛電極事業では、電炉向け黒鉛電極の需要低迷が続いていました。国内の黒鉛電極出荷数量は2022年春以降減少傾向となり、2024年12月時点でも前年同月比▲10.3%と低水準です。世界的にも中国メーカーの台頭など競争激化による供給過剰感があり、電炉鋼(スクラップ製鋼)の減速と相まって電極価格・販売量が落ち込んだことが業績を直撃しました。実際、東海カーボンの黒鉛電極部門の2024年1~9月期売上高は前年同期比▲19.6%、営業損益は23億円の赤字と大幅悪化しています。

一方、カーボンブラック事業やファインカーボン事業は比較的堅調でした。カーボンブラック(タイヤ補強材)は、自動車生産の持ち直しを背景に需要が底堅く、2024年通期の同事業売上高は1,568億円(前年比+5.6%)、営業利益は217億円(+1.9%)と増収増益を確保しました。主要顧客であるタイヤメーカーが在庫調整で生産を一時減速させた影響で販売数量は微減でしたが、コスト高分の価格転嫁や為替効果により増収増益となっています。また、ファインカーボン(半導体製造装置部材等の高機能炭素)は需要が拡大しており、2024年1~9月期は売上高+25.2%、営業利益+38.8%と大きく伸長しました。このように、黒鉛電極の低迷を他事業が補完する構図となっていました。

原材料価格と為替の影響

原材料価格の変動や為替レートも東海カーボンの収益に影響を与えています。例えばカーボンブラックの製造に必要なカーボンブラックオイル(重質油)や電極用の針状コークスなど、原料価格が近年上昇した際には、同社はそのコスト上昇分の一部を販売価格に転嫁する対応を取りました。これにより採算悪化をある程度防いだものの、原料高は利益率の圧迫要因となっていました。またエネルギー価格高騰も、一部製造コストを押し上げる逆風でした。

為替相場については、同社がグローバルに原料を調達・製品を販売している関係上、円安・円高の影響が大きいです。2022年以降の急速な円安(円ドル相場)により、海外売上の円換算額が増える一方で、輸入原材料コストも増加しました。2024年12月期は円安傾向が続いたため、為替差益の発生や円建て収益の押し上げといったプラス効果もあり、特にカーボンブラック事業では為替のおかげで増収増益となった側面があります。もっとも、為替は企業努力では制御できない要因であり、円高に振れた場合には逆に業績の下押し要因となり得ます。東海カーボンも有価証券報告書で「原材料の輸入や製品の輸出を行っているため、為替変動が業績に影響を与える」旨のリスクを指摘しています。

総じて、原材料高や為替変動といった外部環境要因に対して、価格転嫁やコスト削減で対応しつつも、一定の収益圧迫は避けられなかった状況と言えます。

株価が回復した理由

東海カーボンの株価はここ3ヶ月ほどで持ち直し、2025年3月初旬には1株あたり900円台後半まで上昇しています(直近終値986円)。この株価回復の背景には、以下のような複合的な要因が考えられます:

  • 業績のボトムアウトと改善期待:
    2024年通期で大幅赤字となったものの、それは構造改革に伴う特損計上が主因であり、一時要因を除けば本業は黒字を維持しています。さらに会社側が示した2025年の業績予想は黒字転換と利益20%増を見込む内容であり、市場には「今期を底に業績が回復軌道に乗る」との期待感が広がりました。実際、2024年下期にはファインカーボンやカーボンブラックの好調で営業利益が増加傾向にあり、業績底打ちの兆しが見えていました。この業績回復見通しが株価を押し上げる大きな原動力となりました。
  • 構造改革の進展と財務改善策:
    同社は不採算だった欧州子会社(精錬ライニング事業)や黒鉛電極事業でリストラ・減損を行い、将来の収益体質改善に踏み切りました。この痛みを伴う改革を一度で済ませたことで、「膿を出し切った」と評価され、来期以降の収益レベル向上や安定化への期待が高まりました。また、2024年通期の配当は従来予想どおり年間30円を維持しており、巨額赤字でも株主還元姿勢を示した点も投資家の安心材料となりました(※減配なしかは要確認)。
  • 需給要因(株式市場での評価見直し):
    2024年末時点で東海カーボンの株価指標を見ると、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るなど、割安感が意識されていました。構造改革による巨額赤字計上も株価には織り込み済みとなり、むしろ「将来損失リスクの除去」としてポジティブに捉える投資家もいます。また、日本株全体に対する海外投資家の見直し買いの流れも追い風となりました。低PBR銘柄の物色や循環株への資金シフトの中で、東海カーボンも見直し買いの対象となり、出来高を伴って急速に株価が切り返しています。特に決算発表直後の2025年2月中旬には一日で+5%超上昇する場面もあり、市場の評価が劇的に好転したことが伺えます。
  • 外部環境の好転期待:
    業績面だけでなく、足元の事業環境にも明るい兆しが出ています。黒鉛電極市況は長らく低迷していましたが、世界的な脱炭素の流れで電炉鋼への構造転換が進む中、中長期的には電極需要が増加する可能性があります。また、自動車生産の正常化でタイヤ向けカーボンブラック需要は底堅く推移すると見込まれ、半導体業界の回復に伴うファインカーボン需要増など追い風要因も増えています。加えて、為替相場も輸出企業に有利な水準で推移しており、東海カーボンにとって業績追い風となる環境が整いつつあるとの見方も株価上昇を後押ししました。

以上のように、業績の回復基調・構造改革の完了・株式市場での見直し買いといった複数の要因が重なり、東海カーボン株は過去3ヶ月で大きく持ち直したと考えられます。

株価が下落基調だった理由

一方で、直近まで東海カーボンの株価が下落基調にあった背景には、以下のような要因が指摘できます:

  • 業績悪化と利益縮小:
    最大の要因は、やはり業績の悪化です。2022年以降、黒鉛電極市況の悪化や欧州事業の不振により、東海カーボンの利益は大きく落ち込みました。2023年12月期は売上微増ながら営業利益が40→38億円と減益に転じ、2024年12月期に至っては営業利益半減・最終赤字転落という厳しい状況でした。主力の黒鉛電極事業が赤字に陥り、収益を支えていたカーボンブラックも増益幅が僅少にとどまったことから、利益成長ストーリーが描けない状態が続いていたのです。業績悪化が確認されるたびに失望売りを誘い、株価の下落圧力となりました。
  • 需要低迷と市況悪:
    東海カーボンの主要顧客業界である電炉向け鉄鋼や自動車(タイヤ)業界の需要低迷も株価下落の一因です。電炉鋼は中国景気減速やエネルギー高騰の影響で生産調整が行われ、電極の需要はピーク時より大幅減となりました。国内黒鉛電極生産量は2023年に前年比▲10.7%減となり、過去数十年で低水準に落ち込んだとのデータもあります。またコロナ禍や半導体不足で自動車生産が滞った影響で、タイヤ需要も2020~2021年頃に落ち込み、カーボンブラック事業も前年比▲30%超の減収に見舞われました。こうした需要低迷の外部環境が続いたため、同社業績と株価には長らく逆風が吹いていたと言えます。
  • 原材料高やコスト増:
    世界的なインフレ傾向の中で、原油価格の上昇やエネルギーコスト増加が同社のコスト負担を増やしました。例えば2022年前後には重油価格高騰でカーボンブラックの製造コストが上昇し、価格転嫁の遅れから利益率が低下する局面がありました。黒鉛電極の原料である針状コークスの調達価格も上昇し、コスト高圧力となりました。さらに円安による輸入原材料費の増大も重なり、採算悪化要因が山積していたのです。固定費のかさむ欧州事業(精錬ライニング部門)の低迷もあり、全社の収益性に対する不安が株価の重しとなりました。
  • 投資家心理と外部要因:
    こうした業績面の不安材料に加え、世界的な金融市場の不透明感も投資家心理に影響しました。特に2022~2023年前半は、ウクライナ情勢による資源価格乱高下や米国金利上昇による景気減速懸念が台頭し、景気敏感株である東海カーボンにも売り圧力がかかりました。また、同社株は一時海外投資家の売り越し対象にもなっていたとされ、市場全体で低PRB銘柄が敬遠される流れの中、割安放置されていた面があります。企業改革の進捗が見られない間は「業績立て直しに時間がかかる」との見方が優勢で、株価は長期下降トレンドを描いていました。

以上のように、需要の谷と業績悪化、コスト高や市場心理の冷え込みが重なった結果、東海カーボン株は直近まで下落基調が続いていました。しかし、2024年末~2025年にかけてこれら懸念が徐々に和らぎ、前述した通り株価は回復に向かっている状況です。

まとめ

東海カーボン(5301)の株価は、2024年に業績悪化と需給低迷を背景に大きく下落しましたが、直近3ヶ月では業績ボトムアウトと構造改革完了への期待から上昇に転じています。直近の四半期決算では特別損失計上により最終赤字となったものの、本業には持ち直しの兆しが見られ、会社側も次期の増益・黒字転換を予想しています。黒鉛電極や精錬ライニングといった不振事業のテコ入れが進む一方、カーボンブラックやファインカーボンなど好調な分野が収益を下支えしており、事業ポートフォリオの改善も進んでいます。

今後の株価動向は、実際に業績予想どおり黒字回復が達成できるか、そして黒鉛電極を含むカーボン製品の市況が本格的に反転するかに左右されるでしょう。原材料価格や為替レートの変動リスクは依然残るものの、需給環境が好転すれば大きな追い風となります。東海カーボンは中期経営計画で成長戦略「T-2024」を掲げており、環境対応投資や新市場開拓(EV向け負極材など)にも注力しています。そうした取り組みが実を結べば、業績・株価ともにさらなる上昇余地が期待できるでしょう。

Sources

・東海カーボン 2024年12月期 決算短信・決算説明資料
・KABUTAN.JP
・GOMUHOUCHI.COM
・株探ニュース「東海カーボン、前期最終が一転赤字で下振れ着地・今期は黒字浮上へ」(MINKABU.JP / KABUTAN.JP)
・ゴム報知新聞NEXT「東海カーボン、カーボンブラック事業は増収増益」(GOMUHOUCHI.COM)
・フリーライフ投資術「2024年12月期第3四半期決算短信から読み解く東海カーボン」(FREE-LIFE-INVESTMENT.COM)
・経済産業省 生産動態統計 (GD Freak) (JP.GDFREAK.COM)
・その他:日本株市場動向、会社四季報オンライン記事、東海カーボンIR資料 (FINANCE.YAHOO.CO.JP / GOMUTIMES.CO.JP 等)

本記事はdeep researchをつかって分析しています。投資は自己責任でお願いします。