決算cafe
β版です。テスト中です。

ベースフード:MBFアクセラレーションのTOBと市場の行方

抜粋:MBFアクセラレーションのTOB提案を受けた完全栄養食メーカー・ベースフード株の急上昇と急落。その背景にあるTOB価格の評価や部分買付方式、筆頭株主の思惑、業績期待などを多角的に解説し、今後の展望を探ります。

1. はじめに

2025年2月19日、完全栄養食「BASE FOOD」で知られるベースフード(東証グロース・2936)の株価が 短期間で急騰後に急落し、大きな波紋を呼んでいます。2月17日に発表された 資産管理会社「MBFアクセラレーション」による株式公開買付け(TOB)の提案をきっかけに、 一気に株価が上昇しましたが、その翌営業日に様相が一変して大幅下落となりました。 本稿では、この株価乱高下の背景にあるTOBの概要や買付価格の評価、 主要株主の動向、そして今後の展望について解説します。

2. TOBの概要と経緯

2025年2月17日、ベースフードは、メルコホールディングス社長の牧寛之氏が 全額出資する投資会社「MBFアクセラレーション」から株式公開買付けの提案を受けたと発表しました 公開買付価格は1株あたり 688円で、発表前営業日の終値(558円)に約23%のプレミアムを 加えた水準です。買付期間は2月18日から4月15日までの約2か月間、 買付予定数は369万株(発行済株式数の約6.97%)とされ、下限は設けられていません。 応募が上限を超えた場合、 按分比例での買付となる点が特徴的です。

この公開買付けが完了した場合、既に約34.05%を保有している牧氏のベースフード株保有比率は 最大41.02%へ上昇する見通しで、同社に対する支配力が一段と強まることになります なお、TOB成立後も上場廃止は予定されておらず、 ベースフードは引き続き東証グロース市場に残留する方針です。

3. 公開買付者の背景

公開買付けを行うMBFアクセラレーションは、2025年1月に設立されたばかりの 牧寛之氏個人の投資会社です。牧氏はPC周辺機器「バッファロー」で知られる メルコホールディングス(東証スタンダード・6676)の社長であり、 以前からベースフード株を3割超保有する筆頭株主でした

今回のTOBは同氏の「純投資(財産運用)」の一環と位置付けられており、 経営への直接的な参加や経営陣への介入を狙ったものではないと説明されています。 適時開示資料でも「支配権プレミアムの享受」が目的であり、 現経営陣への重要提案や役員就任の意思はないと明言されています

4. ベースフード取締役会の対応

2月17日に開かれたベースフードの取締役会では、本TOB提案に対して 「賛同意見」を表明するとともに、応募(株式売出し)の判断は 「株主に委ねる」姿勢を明らかにしました。 つまり、経営陣としては公開買付けそのものに異議は唱えず、 株価が適正と判断する株主は自由に応募しても構わないというスタンスです。

一方で、提示されたTOB価格である688円については、 発表直前の市場株価(2月14日時点534円)との比較で23%のプレミアムがついている一方、 上場時の公募価格800円には届かないため、長期的な成長余地を勘案すれば 「保有継続にも合理性がある」との見解も示しています。 このため、会社としては「一律に応募を推奨するわけではない」という 中立的な結論を出しています。

5. 市場の反応と株価動向

TOB発表直後の株価上昇(2月17日~18日)

TOBが発表された翌営業日(2月18日)の株式市場では、ベースフード株に買い注文が殺到し、 ストップ高寸前まで値を上げました。 前日終値558円に対してTOB価格688円が強く意識され、 翌日の寄り付きから買い気配で始まったことが要因です。 結局18日は前日比+100円(+17.9%)高の658円で取引を終え、 売買高も前日並みながら買い優勢の展開となりました。

一転、株価の急落(2月19日)

ところが、2月19日になると状況は一変。前日に一時658円まで上昇した株価は 朝方から利益確定売りが膨らみ、寄り付きは628円と 前日終値比で下落スタート。その後も売りが優勢となって 一時586円(前日比約-11%)まで急落し、最終的には610円で取引を終えました。 わずか一日でストップ高分の上昇幅の半分をほぼ打ち消すという 乱高下(暴落)ぶりが注目されました。

この日(19日)の出来高は約209万株と、前日の約44万株から 5倍近くに急増しており、 短期筋の投機的な売買が集中していたことがうかがえます。 18日に「TOB価格へのサヤ寄せ」を狙った投資家が 19日には一斉に売り逃げたことで、急落に拍車がかかったと考えられます。

6. 株価暴落の要因分析

19日にかけての急落には、以下のような複合要因が背景にあると見られています。

TOB価格への失望感

公開買付価格688円は、確かに直前株価と比較すると 約23%のプレミアムが付されています。しかし、IPO時の公募価格(800円)や 成長余力を期待する投資家にとっては「やや物足りない」と感じられた可能性があります。 実際、会社側も「800円を基準としながらも688円は企業価値を踏まえた妥当水準」と 説明しつつ、一律に応募を推奨しなかったことも失望感を誘ったと考えられます。

部分買付けによる売り圧力

今回のTOBは一部株式取得(上限369万株)のため、 応募が殺到すると按分比例により「希望通りにすべて売れない」リスクがあります。 一般に部分TOBは全株TOBと比べて株価がTOB価格に張り付きにくい傾向があり、 市場価格が688円に到達する可能性は高くありません。 結果として、18日に一時的に株価が急上昇した後、 19日には「一部しか売れないなら早めに売却益を確定しよう」と考える投資家が 一斉に手仕舞い売りを出して暴落を招いたと見られます。

牧寛之氏の関与に対する見方

牧氏は既に3割超の株式を保有しており、TOB後に4割を超える筆頭株主・支配株主となります。 経営に口出ししない方針と説明されていますが、 事業シナジーや積極的な経営介入がない点を物足りなく感じる投資家もいます。 将来的な企業売却時に高いプレミアムがつく可能性もある一方、 牧氏が望む条件でなければ買収の機会自体が制限されるリスクも考えられ、 この不透明感が短期的な売り材料となった面があります。

業績動向と企業価値評価

ベースフードは上場後しばらく赤字続きでしたが、ここ最近は業績が改善傾向にあり、 四半期黒字化や売上高の大幅な伸びが報告されています。 そのため、成長期待を持つ投資家からすると「ようやく業績が上向いてきたのに、 安い株価で大株主が持ち分を増やすのは惜しい」と映った可能性があります。 会社も「TOBに応募せず持ち続けるという選択肢にも合理性がある」と明言しており、 投資家間で売却か保有かの判断が割れたことが乱高下に繋がりました。

7. 今後の展望

TOBの成立可能性: 買付予定数は発行済株式数の約7%と小規模で下限もなく、 経営陣もこのTOBに賛同を表明しているため、成立の可能性は極めて高いと 見られています。市場価格がTOB価格を下回っている限り、 応募を検討する株主も一定数存在するでしょう。

株価の見通し: 期間中(2月18日~4月15日)はTOB価格(688円)が上値メドとして 意識される公算が大きいです。既に市場では600円前後まで下落しており、 もし業績サプライズなど新たなポジティブ材料がなければ 株価が再び688円近辺に回復する可能性は高くないとの見方が多いです。 一方、下値ではTOB応募や裁定取引を狙う買いが入るため、大幅な下落も限定的かもしれません。 当面は600~688円のレンジ内で推移するとの見通しが浮上しています。

中長期の株価回復: 最終的には、同社の業績拡大や収益性向上が鍵を握ります。四半期決算で黒字定着や 成長が継続していることが確認されれば、株価が見直される展開も十分あり得ます。 牧氏という安定大株主の存在が、将来的には積極的なテコ入れや追加投資につながるとの 期待も一部では根強いです。

8. 投資家への影響と留意点

部分TOBへの応募判断: 現在の株価がTOB価格を下回っていることで、TOB応募には一定のメリットが あると考える株主も少なくありません。しかし、応募株数が上限(369万株)を超えると 一部しか買い取られないリスクがあるため注意が必要です。 応募手続きには証券会社を通した申し込みが必要となり、 按分比例の結果、残った株式は引き続き保有することになります。

支配株主の影響: TOB成立後、牧氏は約4割を占める支配株主となり、 株主総会で大きな影響力を持つ立場になります。もっとも、 牧氏は経営に直接関与しない方針を明言しているため、現経営体制や事業戦略は 従来どおり継続される見込みです。むしろ、大口の安定株主の存在は、 敵対的買収のリスクを下げる利点もあります。 他方、今後第三者がベースフードを完全買収しようとする際には 牧氏の意向がカギを握る可能性があり、一般株主にとって 「将来の買収機会を逃すリスク」と「支配権プレミアムを享受する機会」の 両面が考えられます。

9. まとめ

ベースフード株の急騰と急落は、TOB価格(688円)の評価部分買付け特有のリスク、そして 筆頭株主の戦略への思惑などが複雑に絡み合った結果と見られます。 一見すると友好的なTOBですが、価格を「高い」と見る投資家と 「まだ割安」と見る投資家の間で需給が急変動し、乱高下を招きました。 ただし、上場は維持され、業績が大きく変動するわけではないため、 中長期的には会社の成長シナリオが再評価されるかどうかが鍵となります。 投資家はTOB応募を含む売買判断を慎重に行いつつ、 今後の決算内容や経営方針の継続性を注視する必要があるでしょう。

本調査はDeep researchを活用しています。投資は自己責任でお願いします。